「私のコスメ煩悩」をテーマに2018年12月28日~2019年1月31まで開催した第8回コスメ川柳は、前回よりも200件以上も上回る過去最高の計564句の作品をご投稿いただきました。たくさんのご応募ありがとうございました!
今回はゲスト審査員に川柳作家のやすみりえ先生をお招きし、プロの目線から優秀作品9句をお選びいただきました。それぞれの作品にやすみ先生より考察・コメントもいただいております。やすみ先生へのインタビューと併せて、結果発表をどうぞご覧くださいませ!
※受賞者の皆様には個別にメールをお送りいたします。
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やすみりえ先生コメント
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花を摘む 少女のように コスメ買い
みい 様
やすみ先生:エレガントな雰囲気の漂う作品です。ですがちゃんと「煩悩」を感じさせる部分もあり、巧いですね。花を摘みたい、と思う欲は美しいものへの憧れ。確かにコスメの魅力と通じます。
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どんとこい 盛れる要素は 満載だ
渦巻ねね 様
やすみ先生:”どんとこい”や”満載だ”という言葉のおかげで、元気の良さや前向きな雰囲気を持った句に仕上がっています。コスメに囲まれて、楽しくあれこれメイクアップしている姿が浮かびました。
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ボルドー系 使いあなたを 酔わせたい
さごじょう 様
やすみ先生:ロマンチックな思いが素敵な川柳になっています。ボルドー色→ワイン→酔う、とつながる言葉のイメージも上手に取り入れていますね!
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断捨離も 聖域守る メイク品
さといもこ 様
やすみ先生:整理整頓したい気持ちをメイク道具たちが揺さぶるのですね。”聖域”というキリリとした言葉が効いています。
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彼一途 だけどコスメにゃ 浮気性
ユーカリ・ポポラス 様
やすみ先生:恋の煩悩はうまくおさめられても、コスメに対してはムリ!そんな気持ちを軽やかに詠めています。
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元号は 変われどコスメ 終わりなし
アカエケイ 様
やすみ先生:”平成最後”というフレーズが飛び交う今日この頃。でもコスメ愛に終わりは無いんですよね。
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また買うの? その一言が 余計なの
あーちゃん 様
やすみ先生:楽しくコスメを選んでいるのに・・・!ちょっぴりムカッときた場面が素直に描かれていますね。
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クリスマス リア充に見せ フルメイク
りほ 様
やすみ先生:たとえリア充でなくても、フルメイクして気分をアップしたいし見栄も張らなきゃ・・・。
今回の審査のポイントに加えて、川柳の魅力や川柳を詠む上でのアドバイス、ご自身も愛好家であるというコスメについてなど、たくさんお話をうかがってまいりました!
――今回のコスメ川柳、いかがでしたか?
やすみ 応募数が約560句と多く選びがいがありました。「コスメの煩悩」というテーマも、すごく興味深いものでした。一つひとつの句を読みながら、まるで女友達と「最近、どんなコスメが流行っているの?」「お気に入りのコスメを教えてよ」などと会話をしている気持ちになってしまったほど(笑)。選考するのがとても楽しい時間でした。 作品全体を通じて、みなさんの「素直な想い」が表現されているとの印象を受けました。言葉選びも言葉使いも具体的で、かつ実体験が伴っているものが多かった。川柳は「本音の文芸」と言われます。真実味が大切なんです。その点今回の応募作品は、いずれも真実味にあふれる作品ばかりでしたね。「平成最後のコスメ事情」が凝縮されている――。そんな印象を受けました。
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――選者として、どのようなポイントを評価したのですか?
やすみ どの句も捨てがたい魅力があったのですが、中でも優秀賞となった「花を摘む 少女のように コスメ買い」という句が印象に残っています。コスメを買うのが楽しいといった表現の句はたくさんあった中で、「花を摘む」という言葉で心情を表現したのはキラッと光っていたんです。
入賞した句はいずれもテーマをしっかりと捉え、さらに何かしらポイントになる言葉がありました。最優秀となった句には、「100人の」という“数字”がテンポ良く盛り込まれていましたし、「花を摘む」という動きや、「どんとこい」というしおしゃべり言葉、「ボルドー系」という色と、それに絡めた「酔わせたい」という表現もそうです。ポイントがあるからこそ、「あ、そうですか」で終わる句にはならない。そこが良かったです。
――もし先生なら、「花を摘む」の句をどう詠みますか?
やすみ 川柳を詠むときに取り入れてほしいのは、「できた」と思った後に読み返して「上五(かみご)」「中七(なかしち)」「下五(しもご)」の中身を吟味することなんです。そして、それぞれで言葉の並びを入れ変えてみたりします。
「花を摘む~」の句にしても、例えば「下五(しもご)」を少し変えて「買うコスメ」としたらどうでしょうか納まりがさらに良くなる印象です。言葉の可能性を探りつつ、完成度をどんどん高めていただきたいと思います。
川柳を詠むときには、「17音しかない」ではなく、「17音もある」と思って作ってください。17音しかないという気持ちで始めると辛くなってしまう。表現を楽しむものなのですから、17音もの言葉に自分の気持ちを重ねることができるイメージで楽しんで欲しいですね。
「説明しすぎない」ことも、心の中のどこかにとどめてください。技術というより、これは「心がけ」でしょうか。五・七・五の句で、自分が「言い足りない」と思うぐらいの方が読み手も情景を想像しながら作品を味わうことができます。コスメは目いっぱい盛る楽しさもあるかもしれませんが、川柳はあまり盛り過ぎないほうが良いと思います。言ってみれば「引き算メイク」のような心で望むべきなのかもしれません(笑)
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――川柳を作るコツをぜひ教えて下さい。
やすみ 川柳は本音の文芸であると同時に、「人間を詠む文芸」とも言われています。つまり私たちの身の回りのことを何でも題材にして良いということ。「間口が広い」ことが川柳の魅力であり、作る楽しさや面白さにもつながっています。
もう一つの魅力は、「おしゃべり言葉」で表現できるところです。「俳句は文語体、川柳は口語体」とされるように、普段の話し言葉で良い。今回の入賞作品にも「この人だあれ」「どんとこい」「酔わせたい」といった表現がありました「おしゃべり言葉」で軽やかさが良いアクセントになっていますね。
私が初心者の方々にお勧めしている方法はとにかく思いついた言葉を書き出すことです。コスメだったら、例えばリップやアイブロー、マスカラなど自分の好きな小道具を書き出したり、今年使ってみたい色をさらに書き出してみるとか…。
すると、自分の興味が湧くものや書きたいことの輪郭がだんだん見えてきて、何を詠んだらいいのかがまとめやすくなっていきます。私は川柳を初めて20年ぐらいになりますが、初めて句を詠んだころから、とにかく浮かんだことを書き出すようにしています。
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――コスメは川柳に向いているテーマだと感じましたか?
やすみ ぴったりの組み合わせだなと思いました。女性に限らず男性でも身だしなみを大切にする人が増えていますね。コスメを通してさまざまな喜怒哀楽が透けて見えるだけに、多くの人が身近に感じるテーマではないでしょうか。身近なテーマだからこそ、今回の川柳は全体的にハイレベルだったのだと思います。
私自身もコスメは大好きなんです。素敵な自分になるための「魔法のアイテム」だとさえ思っています。
そんな気持ちを17音に乗せて表現することに、コスメ川柳ならではの面白さがあります。次のコンテストも楽しみにしています。
やすみりえ(川柳作家)
兵庫県神戸市出身。大学卒業後に本格的に川柳の道へ。
恋を詠んだ作品が幅広い世代から共感され、現在多数の公募川柳コンテストの
選・監修を務める。テレビ等での川柳コーナー・各地で川柳ワークショップの開催など、
句作りをとおして言葉の魅力を伝える活動も。
句集に「召しませ、川柳」「ハッピーエンドにさせてくれない神様ね」(新葉館出版)等。
全日本川柳協会会員。文化庁文化審議会委員。
連動企画
【川柳企画連動型の募金は累計50万円を突破!】
コスメ川柳ではショップ内の人気キャラクター、パンダの「コスコス」と連動した企画として、上野動物園のパンダ募金(SAVE the PANDA ジャイアントパンダ保護サポート基金)に協力しております。
今回の応募作品数564句×200円=11万2800円を募金いたしました。
募金の様子は下記の公式ブログの記事にてご報告させていただいております。
公益財団法人東京動物園協会が運営している「ジャイアントパンダ保護サポート基金」(http://www.ueno-panda.jp/support/)は
上野動物園をはじめとするジャイアントパンダの飼育施設での飼育環境の向上や保護活動に役立てられます。
これはもう、なるほど納得の一句です!「私のコスメ煩悩」という今回のテーマの芯を捉えた表現ではないでしょうか。”100”という数を繰り返し使ったり、”ポーチ”というコスメと関わる小道具も取り入れ過不足無く十七音にまとめてありお見事です。